昏迷する心、心の奥底で。

　その人を一言でいうと、こうだ。



　頭が良すぎる。

　

　僕は頭が悪いから、その人のことは完全に分かるはずもない。だけど、似ているところは、今まで話している中でたくさんあると感じてきた。その人が後悔していること、どんなことをしてきたのか、どんな感情を抱いて生きてきたのか。どんな状況に陥ると、どんな行動をとってしまうのか、とか……いろいろ。

　その人のことを理解できなくても「似ている」という、ただそれだけでも、その人のことを理解しかけていると思いたい。

　僕が今その人が陥っている状況になると、そう頭の中でシミュレーションしてみる。そんな時、僕はどう思うだろう。僕は何をするだろう。僕は人に何を要求するだろう……。

　どんな風に、他人へ共感を求めるんだろう。

　その日、昏迷してしまった自分は、その人に何を言っていたんだろう。

　今、こんなことをブログに書いているのも、なんだか遅すぎた感じがしなくもないけど……。



　夜、その人の名前を寝言でつぶやいて、その声で起きてしまうことが何度もある。



　だけどその人の夢は、見ない。

　原因は、顔も本名も知らない相手だからだろうか……。



　手元に残る真実は、自分の欲望とも思える感情だけだった。