エンジェル・ゲート

　ボクは不器用だ。
　だけど、そんなボクをあの人は理解してくれた。そこから旅立とうとするボクのことを、理解してくれた。その人だけじゃない。そこにいる人たちも、ボクのことを理解してくれた。……理解してくれるだろう。
　だからボクは、誇り高く、胸を貼ってここを出て行ける。
　後ろめたい気持ちも、たくさんあるけれど……永遠に会えなくなるわけじゃない。

　きっとあの時、喧嘩別れになったあの人も……ボクのことを理解してくれている……。
　だから、友達でもいいから戻りたいと言いに行ったときも、少しは話の相手をしてくれたんだろう。泣いてしまって、まともにチャットはできなかったけれども……伝えたいことの何割かは、伝えられなかったけれども……。
　そしてそのとき、ボクは、約束した。ボクは、守らなきゃいけない。ボクは、『狐の寝床』という名前を守らなくてはいけない。そこに居る人たちを、守らなくてはいけない。

　それがボクの使命で、約束。
　あの人と交わした、約束。

　いつかはこうなっていたんだ。
　それが少し、予定が早くなっただけの話……。

　あなたが好きだった『エンジェル・ゲート』という曲。
　誰しもが幸せになるために通る門、エンジェル・ゲート。
　きっと、その門を開く鍵は、この手の中にある。ボクにも、あなたにも。ただその鍵では、同じ扉を開くことが出来なかっただけの話なんだと思う……。

　エンジェル・ゲート、やがてボクに訪れる光、幸福。
　きっと、今はまだ開いていない。

　しかしただ確実なのは、途方もない約束を果たすために開かれた未来があるということ。