個性と意味。

　僕には個性がない。
「え、うそ」
　って思った人がいるなら、僕は自分の持っている個性が何なのか気付いていないんだろう。
　でも、僕を取り巻く人たちが輝かしいほどの個性を持っているから、こんな僕でも個性を持っているようにも見えてくるんだと思う。周りの人の持っている個性が光るから、個性の持っていないことすらも、個性にしてくれる。光を分けてくれる。
　個性は、必ずしも光っているものじゃない。きっとね。
　もしかしたらその個性は、誰かにはプラスで、誰かにはマイナスになっているかもしれない。
　だからどうした、ってい聞かれたら、何も言い返すことはできないけど、僕はなんとなく、今日の下校時の電車の中で、そう思わされた。

「急に、どうしてそんなことを？」
　いや、ただ単になんとなく、そんな幸せを感じただけ。

　無意味なものは、どこまでいっても無意味だ、といわれたことがある。
　僕はこんな言葉、絶対に信じない。
　僕が無意味だと思っていても、良い意味でも、悪い意味でも、誰かには意味があるものだったら、その時点でもう、意味のあるものになっているに違いない。
　僕の大好きな、坂本真綾さんだって言っていた。数年前に発売されたアルバム『少年アリス』の『スクラップ～別れの詩』という曲で、こんなフレーズがあるんだ。
「道端に捨てられた、ゴミの清らかな魂」
　そう、きっと誰もが「要らない」と思って捨てたゴミにすら、注目している。
　それが悪い意味だったとしても、良い意味だったとしても……必ず何か意味を宿している。悪い意味を持っているものだったら、誰かが良い意味を持っているものにしなければならない。リサイクルとかしてね。
　そして誰かの欠かせない、大切なものになれた瞬間……それは、とても幸せなことなんじゃないかなぁ。

　あと、これは誰かに当てたアドバイス的なメッセージ……。
　自分は弱いと思ってしまうのなら、何かひとつのものにこだわって見るのがいいんじゃないかな。
　何かひとつ、誰にも負けないような特技があれば、それはきっと自分を守る刃にもなるし、誰かを守る刃にもなる。僕の場合、それがたまたまウィンドミルだっただけ。
　ウィンドミルのマスタートレーニングを終了して得た教訓が、『万能は身を滅ぼす』。
　なんでもできるっていうのは、長けているものもなければ、劣っているものもない、ということ。確かにそれはある種の憧れる点でもあるんだけど……。
　それに、学校の先生が言っていた言葉。

「何かひとつ得意なものがあれば、他の事柄にも応用できるし、コツを掴むのも早くなる」
　うん、この言葉はきっと信じても大丈夫。